それでは、お話ししましょうか...
そう菩薩様は言うと 語り始めました。

この世の中は五つの要素で成り立っている。
五つの要素が補い合い、反り合いこの世を形成しています。

それはこの世である限り 
命を生きる限り仕方の無いものだと思い
人は生きていきますね。

宿命、業という重い「概念」を気付薬にして
ただひたすら道を歩んでいく。

しかし、
概念」も「宿命」も「」も「想い」「感覚」も

全て全く同じ物だと
)だと

気がつく事が、感じる事が出来れば、

人はそんなに必死に成らずとも、
運命に振り回されず

人々が思う所の幸せに近づけるものなのですよ。

「概念」 「宿命」 「形」 「想い」 「感覚」

それが全て()であると実感出来れば、
人はそんなに苦行を行なわなくても良いのです。

菩薩様は民の中でも一番徳があると称されている
修行僧シャーリプトラに語りかけました。

シャーリプトラよ、この世に有る形ある命は全て()になります。
そして形を持たないものも(
)となるのです。
)であるからこそ、皆この世に有る事が出来るのですよ。

恐れながら申し上げます!!!

シャーリプトラは声を張り上げました。

菩薩様、それでは私たちに()は解りません。
この尊い教えを伝えようにも使え切れません。
乳飲み子幼子、成年、老人にも解る様に
私たちに教えて頂けないでしょうか??

ざわざわざわ......民達はざわめきます。

菩薩様とは人を解脱された存在。
そんな尊い存在に声を張り上げ意見を切り返すなど
普通に考えて、全く持ってあり得ないことです。


でも、シャーリプトラの言った事はその場にいたほとんどの民が
なんとなく思っていた事でした。

シャーリプトラは今では立派な仏門の徒ですが、バラモンという別の宗教の家系に生まれ
幼少の頃から慈悲とは無縁の勉強を積んできました。
そのお陰か、彼は仏門を叩く幾万の徒の中でも非常に稀な思考と探究心の持ち主に成り
皆より一目を置かれる僧侶として成長を遂げた希有な存在でした。

シャーリプトラは更に熱く語ります。

私はあなた方と等しく教えを共有したい!
私だけじゃない。ここにいる人々とも
いや、これから生まれ形持ち命あるものすべてと
(空)に至る教えを共有したいと思うのです。

一部の者だけが知識を有する事は私は良くないと考えます。

くだらない制度の所為で沢山の人々が今も苦しみを背負い生きています。

その物達は叡智を身につける事すら許されないのです!!
一部の人だけが悟りを開き叡智に導かれる教えではなく
どうぞ私に、私たちに、どんな存在でも理解出来る教えとして
伝えてくださいませ!

シーンと静まり返った丘から少しずつですが、パチ....パチ...と手を叩く音が聞こえ
やがてそれは丘に集まった民全員が手を叩く音に変わっていきます。


そして拍手が少しずつ止み始めると星明かりの空にリーンという鈴の音が幾重に響き渡り
澄んだ音色が人々の歓喜の心を鎮め落ち着かせていきました。

鈴の音が止み菩薩様はにっこりと笑えみます。


では、出来るだけ解りやすく()を解きましょう。
菩薩はそう伝えると民に更に近い場所に降り立ちました。