観世音は静かに語り始めました。

空とは「何でもない」状態を現します。

概念」「宿命」「」「想い」「感覚とは
心の中の意志や想いがが形を持って現れた
「象」
形を形成した状態を現し

「空」とは
形が全てが消え去り全く
「何でも無い」
状態の事を現します。


本来宇宙や私たちのいる世界では
「空」が満ち溢れています。

しかし
あなた方は「空」を作り上げるには
非常に難解な世界に存在します。

でもあなた達は敢えてこの世界を選んできました。

あなた達ははこの形ある世界に
宇宙と同等の「空」を響かせる為に
この場所に降り立った「同士」なのです。

空とは全てにおける完全な調和
永遠と瞬間を併せ重ねる変容の果てにある光明です。

残念な事に普通の人々にはこの「空」を感じる事は容易ではありません。
「音」とは「光」のもう1つの姿。
全ての魂を放つ「響き」なのです。

では、あなた方が交流する為に使う音である
「言葉」を使って
みなさんに「音」を感じでいただきましょう。

そういうと観世音はゆっくりと回りを見渡しました。


この丘には種別を問わず様々な人達が集っていますね。
あなた方の本来の言葉は様々なもの...。
皆さん周りを見渡してみて、出会った事の無い
異国の方と自由に喋ってみてください。

ざわざわ...と、様々な言葉が響きます。
通じない会話から成る不協和音が場にじんじんと染み渡りました。


では...、次に相手の目をみて見つめあって下さい。

今度は耳に聞こえないざわざわが、場に響き渡ります。
何も知らない人が目を通して心に入り込み
心の中に少し不思議な違和感が走りました。


今感じてほしいのは違和感ではなく
「外に響く音」と「内に響く音」の差です。
どうでしょうか皆さん、
先程とは少し違う「音」を感じましたか?

「音」は様々なものを乗せて運びます。
喜びも、悲しみも、違和感も全て。

「外に響く音」は魂から成る明確な意志を伝えるのに優れています。
外に響く音の特徴は耳で聞く事が出来るという点でしょうか。
「外に響く音」の一音は非常に強く世界に働きかけます。
その音は新たな「魂の音」を想像する力を秘めています。

「内に響く音」はとても繊細なので
「音」として感じられる人と感じられない人がいるかもしれませんね。
しかしあなたがたが「心」と呼ぶ場所は常に
「内に響く音」で満ちあふれているのです。
「外に響く音」では現せない光が乗る音 
それが「内に響く音」の本質

観世音はふわりと腕を前へ伸ばし、
一人の荒々しい男を指差しました。

そこな方、どのような声でも良いですので
今の気持ちを乗せて声を出してみて下さいますか?

男は胸を張り大きく息を吸います。
そしてありたけの息を声にして吐き出しました。
それはそれは強く大きな声で、
まさに男の自身そのものの声でした。

そして、だんだん声に一定さが無くなり
不規則に激しく抑揚のついた男の声は

まるで泣き叫ぶ赤子の様な
この世の果てさえ届きそうな位の
とっても大きな鳴き声になり
集いの丘を引き裂く様に響き渡りました。

そして男の声は、だんだん、だんだん
ゆっくりとため息の様な小さなしゃがれた声になり
嗚咽まじりの弱々しい声なり
静かに、静かに消えていきました。

力つきた男は地面にしゃがみ込み
小さい嗚咽をかみ殺しながら観世音の方を見ました。


ありがとう。
とてもとても良く貴方の想いが響いていましたよ。
上手に、大きく勇敢に唱えなかった事を悔いてはいけませんよ。

本当に、ほんとうにありがとう。

観世音は皆に語りかけます。

今の声が「外に響く音」と「内に響く音」が響き合わさった音です。

音は全てを運びます。

そして瞬時に概念」「宿命」「」「想い」「感覚を乗せて世界に放出する事が出来ます。
しかし音というもののを細かく分けて一番細かい音を聞いてみれば、そこには何も乗っていない
純粋て透明な ただの「光」なのです。


音は数を重ねる事で様々な物を伝え、運ぶ事ができます。
しかし音を原始まで紐解けば何も無い唯の光明なのです。